"BLACK SIGN × MORNINGSTAR クロスロード展" Episode 3/8
いつも"BLACK SIGN Main Lodge"をご愛顧いただき誠にありがとうございます。
Main Lodgeにて行ったクロスロード展で作品を提供いただいた、
MORNINGSTAR山田氏「孤高の哲学者」による身の生き様を綴った物語を全8回に渡りご紹介させていただきます。
魂の籠った長文になりますが、是非ご一読ください。
Episode 3/8
特異点
何故に生まれ、何故に生きるのか。
そんなこと考える必要もないかのように、「生」が当たり前となった時代。
物も溢れ、幸せがもたらされたはずなのに、何か大切なことを、忘れてしまっているような。そんな疑念が湧いてくるのは、何故だろう。
当たり前となった有り難いはずの「生」に、彷徨っているのは、何故だろう。
ー 特異点 ー
いつからか、人並みに長いものに巻かれ、人並みに作為を持ち、それが人の世だと、人並みに諦め、人並みを受け入れていた、何処にでも転がっている野辺の石ころ。
そんな石ころを、内側から覆したのはーー
「死生観の一変」
それは何の因果か訪れてしまった。肉体と精神の狭間で過ごすことになった、あの時。
そこで、自分は世界を何も知らないことを知る。たとえ現存する全ての知識を持ったとしても、世界を知らないということを。
人は「幸せ」になる為に生まれたそうな。
だとすれば、人並みの幸せとは何だろう。
それは三大欲をそれなりに満たす事を前提とするなら。
不本意に、突然に、無期限に、そのどれも満たせない「肉体」となったなら。
その時、人は何の為に、生まれた事になるのだろう。
そんな答え、人並みに甘んじていた野辺の石ころが、持ち合わせているはずもなく。
その時、肉体は魂の牢獄へと一変した。
受け入れ難い現実。
この肉体が「自分」なのか?
何処に自分が在るのだろう。
制度の網をもすり抜け、誰の手も届かない、かつて感じたことのない孤独は、何も無い灰色の世界で、自分とは、肉体とは、魂とは、生とは、死とは、世界とは、あらゆることを問うてくる。
そこで唯一、何にも縛られなかったもの、それは意識、言い換えれば本心、「魂」だった。
ただそれだけが真に自由で、それは次第に拡張し、いつしか肉体と魂を分離する視点を与え、細り続ける飢餓状態の日々は、目を背け、蓋をして来た「死」と、彷徨い続けた「生」を向き合わせ、やがて全てを受け入れた時、命の殻が割れ、闇と光が、内と外の繋がりの示唆をくれた。
当たり前にあった命は、一瞬の幻であり、奇跡的な均衡で、全ては密接に繋がり、連動している。
世界に「枠」を作っていたのは、 「自分」だった。
ーーーーーー
生と死、それは二つで一つの「理」。
「肉体」という、美味そうな人参を追いかけ、
目に見えるそれを貪ってはただ繰り返すだけの「荒馬」に、
ただ引き摺られるように隷属してきた「魂」。
どんな人参を何本食べたか。
どんな寝床で、どれだけ甘い水を啜ったか。
そんな走馬灯に、何の意味も無かった。
誰の為にも、何の為にもならず、
ただ命を垂れ流してきた、途轍もない空虚と虚無。
こんな事の為に、生まれたわけじゃない。
喉元過ぎれば一瞬の人生だった。
このまま百年生きようが、千年生きようが、
喉元過ぎればまた一瞬。
そして、同じ事を思うだろう。
こんな事をする為に、生まれたわけじゃないと。
この一瞬の命を、永遠の光に変える。
生死を超越した、魂の解放。
生きたい、死にたいを超えた時、
「在りたい」という一本の「道」が見えてくる。
荒馬にただ引き摺られてきた魂が、
その背に跨り、人馬一体となる。
その時、人は初めて「自由」を得る。
何にも揺るがず、
ただ内なる高潔に馳せる自由を。
将に将たる「星」の如く。